才川夫妻の恋愛事情
部長は言った。
「話したかったのは今の業務のことだ。花村、お前才川の補佐続けたいか?」
「あぁ……」
異動の話か、と、わりとすんなり受け止めていた。結婚すると言えば才川くんと同じ部ではなくなるんだろうなとぼんやり思っていたし、逆に今日までその話が出なかったのが不思議なくらいだ。
続けたいか、続けたくないかと言われれば。
口を開こうとしたが一瞬遅くて、部長が先に畳みかけた。
「いや、悪い。続けたいかって訊いたがほんとはもう決まってるんだ。才川から聞いてるよな? 花村は準備ができ次第営業三課」
「……」
勿論聞いてるよな? というニュアンスで言われたけれど勿論聞いてない。
私はそれを誤魔化すようににこっと笑った。
「今までも息合わせてうまくやってたし、別に支障なさそうだなーとも思ったんだけどな。仕事はうまく回せても周りの目が前よりやりにくいだろ」
「はぁ」
「……まぁ二人とも気にしなさそうな性格ではあるけど。一応、打診はしようと思って。才川にも訊いてみたんだ」
「それで、もう異動が決まってるってことは」
「ん? ……もしかして聞いてないのか? 才川から。あいつとは昨日話したんだが」
「あぁいえ……。彼が問題ないと言ったなら私はそれで構いません。すぐに動きますね」
「俺としてはすごく惜しいんだけどな、花村持っていかれるのは……。まぁ前から引く手数多だし。サポートに就く人間が変われば仕事も変わって、楽しいだろうよ」
「はい、楽しみです」