才川夫妻の恋愛事情


相変わらず何も教えてくれない癖は気になったけれど、異動自体は確かに仕事のことだし、仕方ないと思っていた。もう四年は才川くんの補佐をしていたから、決して飽きたわけではないんだけど他の人につくのも面白そうだなー、なんて。

何より私たちは結婚しているし。昔、会社で目も合わさなかった頃は家でもそっけなくされて寂しかったけど、今はそうじゃない。今なら全然寂しくない。

そう思っていた。





「……え?」


三課に異動してからちょうど一週間。化粧品会社のタイアップ広告が載る雑誌の校正をしていた夕方六時。才川くんからLINEが届く。



〝遅くなるから先寝てて〟



今日も? と、一人首を傾ぐ。

この一週間、彼の帰りは終電をまわり深夜になることが続いていた。それ自体は特に珍しいことじゃない。提案前や得意先の繁忙期には深夜残業が続くことがあるのも知っている。でも、自分が把握している限りでは、そんなことなかったのに……緊急案件でも入ったんだろうか?

そんな会話をする暇もないくらい、私たちの生活はすれ違った。土日は元々予定されていた地方出張があったこともあって余計に。夜は私が眠っている間に帰ってくるし、朝は、直行だからもう少しだけ寝る、と彼が言うので私が先に家を出ていた。






……生活が噛み合わない……!






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