才川夫妻の恋愛事情


一冊分の校正が終わって、キリがいいところで思い出した。松原さんからお願いされていた新聞記事のクリッピングファイル。あれを返していない。本当に今それをたまたま思い出して、席を立つ。

ファイルを持って二課へ向かうと、二課の島には才川くんしかいなかった。傍まで歩いていくと、才川くんはちらっと私の顔を見て、開いていたファイルをキャビネットの中にしまった。視線をパソコンの画面に移して、メールを打ち始める。私は構わず話しかけた。



「なんか、久しぶりですね」

「そうでもない。毎晩寝顔見てるよ」

「それなら私も、朝に布団の中でねばってる眠そうな顔なら見てます」

「うるさい」



周りに人がいないからか、話す声のトーンが家にいるときと一緒で嬉しくなる。私は松原さんに渡すはずだったファイルを手の中に持て余しながら話し続けた。



「最近、順調ですか?」

「……あぁ」

「帰りが遅いですけど」

「急な頼まれごとが多いんだ」

「そうなんですか。大変ですねぇ……」



言いながら彼のデスクを見回す。



「さっき連絡入れたけど、今日も遅くなる」

「見ました」

「起きてなくていいから」

「うん」



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