溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「あのー、今、課長が想像したほどじゃないと思いますよ」
と言いながら、いや、おそらく、現実の方がブザマだったろう、と思っていた。

 いっそ、助けてくれたの、課長じゃない方がいいかもな。

 特におじさんのお尻に頰を張り飛ばされたところなど、好きな人に見られたいものではない。

「あの、助けてくれたの、課長なんですか?
 どうなんですか?」

「……それは俺じゃないんじゃないか?」
と言うが、笑っている。

 どっちだ。
 どっちなんだ?

 本当に課長じゃないのか?

 それとも、課長なんだが、訳のわからないことを言ってくるこの女がめんどくさくて、そう言ってるのか?

 ああ、足許がぞわぞわっとして、考えがまとまらないっ、と見なければいいのに、ガラス張りのエレベーターから外を見ながら花音は思った。

「ほら、着いたぞ、芹沢」

 ぽんぽん、と軽く頭を上から叩かれる。

 どっちなんですか、課長ーっ、と思いながら、先に降りていく昌磨を見送った。



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