溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
 


 仕事を終えた花音はATMでお金を下ろしていた。

 欲しい雑貨があったのだ。

 わざわざカードで買うほど高くはなく、キャッシュで買うには少し高い。

 だから、ちょっとばかし、お金を下ろしたのだ。

 よしっ、と思いながら、ATMの周辺を指差し確認をする。

 落し物がないか、画面は元に戻っているか確かめたのだ。

 鼻歌を歌い、外に出て、ぎょっとした。

 そのまま、後退しかけて、よろける。

 その腕を掴まれた。

 あの手で――。

「よくすっ転ぶ女だな、芹沢花音」

 何故、フルネームですか、課長〜と思ったとき、昌磨が手を放した。

 なんて、偶然っ。
 運命だろうかっ?
と思ったが、よく考えたら、会社の側のATMだからだった。

 恋する乙女はなんでも運命にしたがるな、と自分で思った。

 昌磨は、
「今の指差し確認はなんだ?」
と訊いてくる。

「み、見えてましたか。

 いや、あれはですね。
 私が入社したとき、部長に教わった指差し確認です。

 部長がいつも、仕事のとき、ああやって確認してらしたのが、移ったんです。

 その部長はもういらっしゃらないんですけどね。

 つい、日常生活でも使っちゃって」
と言うと、

「素直な奴だな」
と言う。
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