溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
 


 言ってる端からやらかしてしまった。

 花音は店の近くまで行って、ポイントカードの入ったカード入れをデスクの引き出しに入れたままだと思い出したのだ。

 慌てて取りに戻ったとき、ちらと地下駐車場が見えた。

 あれ? 課長の車ある。

 また戻ってきたのかな?

 そう思ったが、課長の姿はなかった。

 代わりに、同じ部署の先輩に見つかった。

「おっ、芹沢っ。
 戻ってきてくれたのか。

 このデータの修正……」

「あっ、明日でいいですか、明日でっ」
と言いながら、書類を預かる。

 もう閉店時間になっちゃう〜っ、と引き出しにそれを入れ、
「お先に〜っ」
と言うと、

「なんだ急いで。
 デートか?」
と笑われた。

「相手見つけてくださいーっ」
といつも返す言葉を口にして、走り去る。

 ぞわぞわっと来るエレベーターに乗りながら、いや、今の言葉は今日からは正しくないな、と思っていた。

 相手は見つけました、なんとかしてくださいーっ、かな?
と思って、苦笑いする。

 やめとけと言われるだろうな、と思っていた。

 まあ、私と課長じゃ釣り合わないよね。

 そう思いながら、外を見る。

 足許が落ち着かない感じにはなるが、それを我慢しても見る価値のある夜景だな、と思っていた。

< 35 / 232 >

この作品をシェア

pagetop