溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
 


 か……買いすぎてしまった。

 雑貨屋のおねえさんと話が弾み、つい調子に乗って、服まで買ってしまった。

 あの雑貨屋さん、小物はそう高くないけど、服は高いんだよね〜。

 結局、カードで払うはめになった。

 なんのために、お金下ろしに行ったのやら、と思ったが、まあ、お陰で課長に会えたんだから、オッケーか、と思う。

 それにしても、服も買ってしまったし、小物も大きかったので、大荷物になってしまった。

 ガサガサと幾つも袋を下げて駅への道を歩いていると、たまに行く喫茶店の前で煙草を吸っている人と目が合った。

 非常に課長とよく似ている。

 だが、服装が違った。

 さっきまで着ていたスーツではない。

 この季節に白いカッターシャツに黒いベスト。

 寒くないですか? と思ったとき、向こうが先に口を開いた。

「なにをしている、芹沢花音」

「か、買い物です」

 昌磨の目が花音の手許を見る。

「買いすぎです……」
と自分で言うと、うん、と言われる。

 っていうか、本当に課長だったのか。

 なんだか会社に居るときと、雰囲気違うぞ、と思っていた。

 会社では切れ者の落ち着いたエリートって感じたけど、今は、なんというか、……貴公子?

 ふいに思い浮かんだそのフレーズが気になった。

 なんだっけな?
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