溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
 はい、とついていくが、階段では特に、山のような紙袋がガサガサうるさく、歩きにくい。

 失敗したな、と思っていると、あの手が自分に向かって伸びてきた。

 どきりと身を引きかけたが、昌磨は、ひょいと紙袋を取る。

「あ、あの」

「歩くのに邪魔だろ。
 俺も横を歩きにくい」
とそれらを肩にかつぐように軽く持った。

「あ、ありがとうございます」
と頭を下げる。

 階段を曲がったところに、その店はあった。

 落ち着いた木のドアが見える。

 ドアにはまったすりガラスから、中が少し窺えた。

 落ち着いた内装の大人の店だ。

 入るの緊張するな、と思うのを見透かすように、昌磨が振り向き、
「大丈夫だ」
と言う。

 客層もいつも自分たちが行くような店とは違う。

 少し年齢層が高めな感じがした。

 中に入ると、
「そこの辺にでも座っておけ」
と空いている隅の席を勧める。

 あ、大きなグランドピアノ。

 黒いそれは薄暗い店内の温かい照明で艶やかに光って見えた。

 他の楽器も並んでいるが、今は誰も演奏してはいなかった。
 
 昌磨が声をかけ、店員の若い男の子がすぐやってくる。

「こんにちはー。
 昌磨さんのお友達」

「あ、こ、こんにちは」
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