溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「まあ、イタリアのときの話は、マスターも良も知ってるがな」
と言われ、またテンションが少し下がる。

 二人の秘密じゃなかったか……。

「しゃべりませんから、今度また、あのお店、連れていってくださいね〜」

 おかしな期待をさせるから、もう〜と恨みがましく見ながら言うと、昌磨は、
「脅迫か」
と言ってくる。

「脅迫ですよ〜」
と駄目元で言ってみると、昌磨は、

「わかった」
と言ってきた。

「え、わかった?」

 自分で脅迫しておいて、訊き返す。

「次の演奏は水曜だ。
 気が向いたら、来い」
と店のマッチを渡された。

 細くて四角い、小洒落た茶色い箱だ。

「あ、そういえば、課長、煙草吸うんですね」
とそれを手にしたまま、花音は問うてみた。

 あのとき、店の前で、確かに昌磨は煙草を吸っていた。

「あの店でだけだ。
 中で吸う人多くてな、つい。

 花音、店に来たら、すぐ俺に言えよ。

 迷ったときも。

 演奏10分前くらいまでなら、迎えに出てやる。
 まあ、あの店にそう物騒な人間は来ないけどな」

 そう言ってくれた。

「あ、ありがとうございます」
と花音はマッチを握り、頭を下げる。


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