溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
 


 普通なんでとか訊かないだろうか。

 そう思いながら、昌磨は花音を見送った。

 マッチを大事そうに抱えて、いそいそと戻っていく。

 あんな態度なのにな。

 手だけ好きとかどういうことなんだ、と思っていた。

 っていうか、普通、訊かないか?

 なんで、表舞台から姿を消したんですかとか。

 あの話題の直後が、
『課長、イタリアに住んでたんですね』

『ハーフか、クォーターなんですか?』
 とかおかしいだろう。

 それを訊いたときの、花音の呑気そうな顔も思い出し、吹き出してしまった。

 気を使って触れないようにしたというより、反射的にそう訊いてしまったという感じだった。

 わからん女だ。

 そもそも俺の何処をどう見たらハーフになるんだ。

 良とかならわかるけど。

 合田のメモを思い出す。

『芹沢花音。
 意外に機械に強い。
 パソコン入力が速い!

 仕事を任せるのに細かい説明がいらない。

 アイディアが独創的で良いが、かなり大雑把なので、要注意」

 かなり大雑把。

 確かに。

 仕事だけでなく、人間的に。

 昌磨は昨日からの花音の言動を思い出し、ひとり笑った。


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