溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「私もそう思って、会うたび、ちょっと緊張してたんだけど。
 でも、香穂さん、いい人だよ」
と今日、口紅を貸してくれた話をすると、

「……いや、それは俺でも貸してやるぞ」

 哀れすぎるだろ、と言ってくる。

「でも、ティッシュとかで、ぐりっと拭いて使えばいいんじゃないのか?」

「そうなんだけど。
 落とした直後のは嫌なのよ。

 あんた塗ってごらんなさいよ。
 ちょっと濡れてるトイレの床に落とした直後の口紅ーっ」

「そもそも塗らねえよ、口紅っ」

「思わず、帰りに同じ色買い直しちゃったんだけど、でも、なんだか捨てられなくて持ってるのよ」

 あげようか、とスカートのポケットから出すと、いるかっ、と言われた。

「ってか、お前、帰ったら、スーツから着替えろよっ」

「ああ、そうよねー。
 うん。
 でももうお風呂入って寝るだけだしね」

「しょぼい人生だな」

 いいじゃないのよう、と言いながら、花音はココアを啜る。

 美味しい。

 拓海のお母さんの淹れてくれるココアは程良い甘さで大好きだ。
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