早く俺を、好きになれ。


そのあとから、私はずっと上の空だった。


休み時間の度に叶ちゃんが話しかけて来たけど、愛想笑いを返すのが精一杯で何を話したのかは覚えていない。


ごめんねと思いながらも、ホントのことは言えなくて。


武富君と織田さんのこと以外、他に何も考えられなかった。


今まで彼女がいるかもしれないって考えたことはあったけど、ウワサにもなっていないしホントのところはわからなくて。


都合良くいないって勝手に思い込んでたけど、武富君の口から彼女の存在を聞かされてすごくショックだった。


カッコ良いもんね……そりゃいるよね。


そんなことを思っては涙が溢れそうになる。


だけど、教室で泣くわけにはいかないから必死に耐えた。



昼休みになって外の空気を吸いたくなった私は、叶ちゃんに断ってひとりで中庭に出た。


叶ちゃんはどうやら、今日は他のクラスの友達とお昼を食べる約束をしていたみたいで。


一緒にどうかって言われたけど、今は1人でいたい気分だった。



ポカポカ陽気が気持ち良い中庭のベンチには、たくさんのカップルが楽しそうにお昼休みを過ごしている。


< 63 / 307 >

この作品をシェア

pagetop