早く俺を、好きになれ。
きっと、美味しそうに食べるんだろうな。
「うわっ、うまっ。なんだこのチーズケーキ!超フワフワだし」
「さすが織田さんって感じだよね」
「え?織田が作ったんだ?すげー」
かなり複雑で、やっぱり織田さんには敵わないんだって改めて思わされる。
はぁ。
「でも、俺はやっぱこの前のクッキーの方が好きだけどな」
「なに言ってんの、そんなお世辞はいらないから」
だって、どう考えてもこの前のクッキーとは比べ物にならないもん。
「いやいや、マジで。咲彩のクッキーの方がうまかった」
最後の一口を口に放り込み、指についたカケラを舐め取る虎ちゃんの仕草を見つめる。
なによ、こんな時だけ嬉しいこと言ってくれちゃってさ。
「……ありがと」
「また作ってくれよな」
たとえそれが私を励ますためのウソだとしても、素直に嬉しかった。
帰ってからひとりになると、自然と頭に浮かぶのは織田さんと武富くんのこと。
2人は今も一緒にいるのかな?
織田さんのチーズケーキ、もう食べた?
どんな顔で美味しいって言うのかな。
「あー、やだやだ」
武富君のことを考えるのはもうやめよう。
気分は沈む一方で、胸が苦しくなるばっかりだもん。
こんなの、私には似合わない。
ベッドの上にダイブして枕に顔を埋める。
こんな時は何かに没頭するのが一番だよ。
ローテーブルの上に置いていた小説に手を伸ばした。
武富君から借りた恋愛ものの小説。
これを読んで、現実を忘れよう。