主任は私を逃がさない

 私は玄関へと急ぐ史郎くんの姿をじっと見つめていた。

 自分のミスが原因でトラブルを引き起こしてしまった申し訳なさ。何もできなかった歯痒さ。

 責任のない史郎くんを矢面に立たせてしまった情けなさを噛みしめながら。


 扉に手をかけた史郎くんが外へ踏み出す直前、こっちを振り返った。

 物言いたげな彼の瞳と、問いかける私の瞳が距離を隔てて絡み合う。

 ほんの一瞬、言葉にならない複雑な思いを交わし、でもそれを口に出すことは叶わず史郎くんは外へ出て行ってしまった。


 遠ざかる背中を見送った後、私は後ろ髪を引かれるように階段を踏みしめながら、どうしようもなく心を掻き乱されていた。

 史郎くんの本意はどこにあるのだろう。

 自分のクビなんかどうでもいいほど守りたいという、この世で一番大切なものって私のこと?

 でも、じゃあ昨日の言葉はどういうこと? それじゃ矛盾している。

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