主任は私を逃がさない

 私は何を信じて、どうすればいいのか。

 まるで出口のない迷路に迷い込んでしまったように心がユラユラ惑う。

 でもどんなに動揺していても仕事は待ってくれない。

 朝礼が終わった直後から電話は容赦なく鳴り続けるし、書類や伝票は机の上に次々と積み上がる。


 とにかく、今は目の前の事に集中しよう。

 自分に課せられた責任は果たさなければならない。私自身のために、そして私を庇ってくれた史郎くんに報いるためにも。


 次長は搬入に出かけてしまったし、周りの人がいつも通りに接してくれたから、必要以上に動揺を引きずらずに済んだ。

 おかげで昼休みの頃には同僚と談笑できるぐらいに気持ちも回復したし、夢中で仕事をこなしているうちに、あっという間に終業の音楽が鳴り響く。

 今朝あんなトラブルがあったのに、今日はいつもよりずっと仕事が順調だった。

 ホッとしながら残りの雑務を処理してデスクの上を整頓していたら、仕事を終えた同僚たちの弾んだおしゃべりが聞こえてくる。


「西田主任、カッコイイよなあ。あの人は頼りになる男だって俺は最初から分かってたよ」

 得意気な花岡さんの言葉に、他の同僚たちもこぞって同意する。

「あんなに自分の部下を大切に思ってくれるなんて理想の上司よね。私、西田主任の下で良かった」

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