主任は私を逃がさない
ちょうどその時、シーンと静まり返ったオフィスの空気を震わせながら、耳慣れた就業開始の音楽が鳴り響いた。
私達3人の様子を固唾をのんで見守っていた課長が、それに助け舟を得たように近寄ってくる。
「ほら、朝礼が始まるから。とにかくここは収めて今日の仕事を始めましょう」
笑顔を顔に貼り付けて、課長は努めて明るい口調で史郎くんと次長を宥めた。
「次長、今日は朝礼の進行役でしたよね? 西田主任は支店の会議に出席するんでしょ? もう出発しないと遅れるよ?」
課長は史郎くんの肩をポンポン叩きながら出入り口の方へ誘導して、さり気なくふたりを引き離した。
「ほら、お仕事お仕事! ホラみんなー、朝礼が始まるから急いで!」
極限に緊迫していた空気と人が、課長のお蔭でソロソロと動き出す。
とりあえずはみんな、朝礼に参加するために急いで二階の会議室に向かって移動を始めた。
険しい顔をしている次長もさすがにこれ以上は何も言わず、史郎くんをひと睨みしてからズカズカと乱暴な足どりで二階へ向かう。
史郎くんは素直に課長に頭を下げていた。
「課長、お騒がせして申し訳ありません」
「いやいや。運転、気をつけてね。支店の皆によろしく」