主任は私を逃がさない

 私は頭を抱えながらその場にヘタリ込んでしまった。

 史郎くんから告白されて嬉しいという気持ちより、『なんだこりゃ』の気持ちの方が大きい。

 あのとき裸足でアスファルトを駆け抜けた、ドラマのワンシーンばりの苦悩と哀しみはなんだったのよ。

 自分が恥ずかしいやら腹立たしいやらで、「うわあ!」っと叫んで逃げ出してしまいたい。


「陽菜、さすがにこれで分かったろ? 俺はお前のことを愛してるんだ」

 史郎くんが、ヘタリ込んでる私の両腕の脇をグイッと抱えて立ち上がらせた。

 そして自分の胸に私の頭をギュッと押し付ける。


「ほら聞けよ、俺の鼓動。これが俺の本音なんだ」


 ―― ドク、ドク、ドク……

 びっくりするぐらい速くて高い音が、彼の胸から確かに聞こえてくる。

 いつも余裕の表情で、私よりも何歳も年上で、大人でカッコイイ史郎くんがこんなに緊張しているなんて。

 ああ、これはもう……。

 恋だ。

 彼の大きな手の平の温もりを後頭部に感じ、目を閉じて逸る鼓動を聞きながら私は思った。

 これは恋なんだ。

 もどかしくて、やるせなくて、バカバカしいほど切なくて、笑っちゃうほど思い詰めて。

 それでもやっぱり手放せなくて、そしてなにより、愛しくて愛しくて……たまらない。

 これが恋。これこそが恋というものなんだ。

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