主任は私を逃がさない
力強い声に込められた、確信と優しさ。
その揺るぎなさが明るい陽射しのように私の心を包み込み、氷を解かすように悔恨を癒してくれる。
ああ、彼は今、自分の言葉によってどれほど私が救われているか気付いてもいないのだろう。
例えようのない喜びと愛しさを少しでも伝えたくて、私も彼の背中に両腕を回して精いっぱい抱きしめた。
史郎くんも嬉しそうに抱きしめ返してくる。
「言ったろ? 俺は器の小さい男じゃないんだ。ずっとずっと陽菜だけを想い続けてきたんだから」
「やだ、なに言ってるのよ。あんなにモテモテだったくせに」
「確かに告白は何度もされたけど、相手にしたことは一度もないぞ? 俺は子どもの頃からお前一筋だ」
「…………ちょっと、待って。相手にしたことは一度もない?」
私は首をもたげて彼を見上げた。
まさか史郎くん、いやまさか、いやでも、もしかして……。
「まさか今まで女の子と付き合った事が無い。……とか言わないよね?」
「いや、言う。付き合った事はない」
「へ?」
思ってもみなかった答えを自信満々に返されて、私は目を丸くした。
「陽菜っていう心に決めた相手がいるのに、他の女に浮気なんかするはずないだろ。俺はそんな不誠実な男じゃない」