主任は私を逃がさない
私の額を指でピンッとデコピンしながら史郎くんが叫んだ。
その真っ赤に染まった顔を見た私は、またまた確信に至る。
「史郎くん、童貞、なのね?」
「……ああそうだよ悪いか! 俺の初めては陽菜に捧げるって、保健体育の授業を受けたあの日に固く心に誓ったんだよ!」
ほ、保健体育って……。
そのリアル極まる単語に私はもう、脱力するやら眩暈がするやらで、史郎くんの背中にフラフラとしがみ付いてしまった。
まさか……まさか史郎くんが、そんな。
実は私の方が経験値が高かったなんて信じられない。
ああ、今日は衝撃的事実が多すぎる。絶対に何年分か寿命が縮んだはずだ。
「陽菜、俺のこの気持ちを受け入れてくれ。結婚して欲しい」
テーブルの上の薔薇の花束を手に取り、史郎くんは私に差し出した。
真っ直ぐで、誠実で、不安に凝り固まった、そしてとても真剣な目をしながら。
そのどれもこれもが、私の大好きなもの。
私が求めてやまない、真実、信頼に値する大切な彼からの美しい真心だ。
私はきちんと姿勢を正し、神聖な気持ちで花束を受け取った。
「もちろん謹んで、かつ大喜びでお受けいたします」
「陽菜!」
「でも結婚はしません」