主任は私を逃がさない

 頭を下げていくら謝っても、次長は許してくれなかった。

 延々と謝り続ける私の声が、ついに涙混じりになってくる。

 どんどん重苦しくなっていく空気の中、いつ終わるとも知れない仕打ちに耐えるのは辛い。

 おまけに時間が経過するごとに出勤してくる社員が増えてきて、私はみんなの視線に晒された。


「ねえねえ、どうしたの?」「なんだよ、あれ」

 ヒソヒソと聞こえてくる会話が神経に突き刺さって、晒し物にされている感を増大させる。

 恥ずかしくて、辛くて、口を開けた瞬間泣き声を上げてしまいそうで、必死になって歯を食いしばった。


「おや? 謝罪の言葉すら聞こえなくなりましたが、どうされましたか?」

「…………」

「謝るのも面倒になりましたか? ああそうですか。しょせん営業ポイントなんてあなたには何の関係もない話ですし、さぞお退屈でしょうね」


 慌てて口を開けて謝罪しようとしたら、小さな泣き声が漏れてしまった。

 声に誘発されたように涙が込み上げて、床を見つめる目から雫がポトリと落ちる。

 もうダメ。限界……。


「でもね、あなたに関係なくても私にとっては重要なんですよ。だから……」

「分かりました。私が何とかします」


 溝口次長のドロッとした声を遮る声が聞こえて、涙に潤んだ私の目が見開いた。

 ……史郎くん?

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