主任は私を逃がさない
ずっと丸め続けていた背中を伸ばして振り返ると、史郎くんがこっちに向かって歩いてくるのが見える。
彼は私の隣にスッと立ち、いつもと変わらない落ち着いた態度で次長に話しかけた。
「来月私が空港に一括納入する分のポイント全部を、次長のポイントとして申告させて下さい」
その意外な申し出に、次長が怪訝そうな目をした。
「西田主任のポイントを私のポイントに?」
「はい。金額的にご不満があれば、今後の私のポイントをその都度、お渡しします。それで今回の中山の失態はどうかご容赦いただけないでしょうか?」
周りのみんなが一斉に、不憫そうな目で史郎くんを見た。
だって、史郎くんだって表彰を狙える実力は充分にある。今度の空港の一括納入はかなり大きなポイントになるはずだ。
それを全部譲るだなんて……私のせいでそんなことさせられない。
「あの、溝口次長……!」
思わず次長ににじり寄ろうとした私の腕を、史郎くんがさり気なく掴んで制した。
彼はチラッと横目で私を見ながら、首を小さく横に振る。
『いいんだ。気にするな』
安心させるようにそっと微笑む史郎くんの目が、そう言っている。
食い入るように彼を見上げる私の胸がジンと痛み、両目がじゅわっと潤んだ。