主任は私を逃がさない
「ほう? つまり主任が、次長である私にポイントを恵んで下さる。という事ですか?」
心持ち顎を浮かせた溝口次長が、いかにも含みのありそうな声を出す。
父が一番可愛がっている最も優秀な部下に、『自分のポイントをお前にやる』と言われた事が、どうやらプライドに障ったらしい。
丁寧口調がますます憎々しく、粘っこくなった。
「私は主任のポイントではなく、自身のポイントが欲しいという正当な要求をしているのですが、それがご理解いただけませんか?」
「それは勿論、理解しています」
「ならメーカーのキャンペーン担当者に話をつけて、あちらの電算課に説明して、データを打ち直してもらって、全部プリントし直してもらって、書類を作り直してもらって下さい」
できないと分かっていて、無理なことを言う。
『ポイントが欲しいから』という理由だけでそんなご迷惑なお願いなんかできないし、聞き入れられるはずもないのは次長も重々承知のはずなのに。
「次長、なにぶん今回はご容赦下さい。この通りです」
史郎くんが次長に向かって深々と頭を下げた。
「今後は二度とこのような事が起きないよう、指導を徹底します」
「そうですね。彼女はあなたの直属の部下ですから、これはあなたの指導不足ですね」
「仰る通りです」