主任は私を逃がさない

「西田主任、今後はくれぐれも手抜き指導はしないようにね」

「はい。鋭意努力いたします」

「そもそも最近の若い者は誠意が足りない。仕事仲間を思いやる意識が低いからこんなミスを起こすんだよ」

「はい。仰る通りです」

「特に他と比べて中山君の無能ぶりは目に余る。女だからって化粧さえ上手けりゃいいってものじゃないんだよ。社会人は」

「は………」

「この仕事に向いてないんじゃないのか? そんなに仕事が嫌なら家で化粧でも、花嫁修業でもしていなさい」

「…………」

「その鈍い頭をもう少し有効活用したらどうだ? わざわざ親のコネで入社したくらいなんだから」

「……おい、今なんつった?」

「……え?」

「あんた今、陽菜になんて言った?」


 たった今まで平身低頭、卑屈なほど謝罪を繰り返していた史郎くんの態度が急変した。

 二つ折り状態だった姿勢をヌウッと起こし、次長を上から見下ろす表情は静かな殺気が漂っている。

 冷たいマグマのような、底知れぬ怒りの気配が彼の全身から轟々と噴出していた。

 その豹変ぶりに次長も、私も、周りの皆も、呆気に取られて目を丸くする。

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