主任は私を逃がさない
「あんたのそれは、叱責でも諫言でもない。ただのハラスメントだ」
「な、なんだその無礼な態度は!」
「陽菜は決して無能じゃない。あんたの方がよっぽど使えないよ」
「な……な……!?」
「ミスした新人にバカのひとつ覚えみたいに『何とかしろ何とかしろ』って、どう『何とか』すべきかを指導するのが上司の仕事だろうが」
史郎くんはグッと一歩踏み込み、地響きのような凄みのある声で次長を威嚇する。
眉間の辺りに激しい憤怒が漲り、完全に据わった目付きで相手を睨む姿は、敵に牙を剥く猛獣のようだ。
「偉そうに責任云々語るなよ。そもそも自分で手続きも確認もしなかったあんたのミスだ。主婦の買い物みたいにポイントポイント騒ぐなら、自分でやる事やれよ」
次長はもう、声も出ない。
まさか役職の低い人間が自分に対して歯向かって来るなんて、夢にも思っていなかったんだろう。
想定外の状況に対応できない次長に向かって、史郎くんは容赦なく噛みついた。
「陽菜に対する根拠のない中傷と、傷つけた尊厳に対して今すぐここで謝罪しろ。陽菜を貶める奴は相手が誰であろうが俺が絶対許さない」
「ゆ……ゆ……ゆる、許さないだとお!? 貴様、何様のつもりだ!」