グリッタリング・グリーン
入院が決まるまで病室をもらうことはできず、葉さんは使われていない診察室の奥の、ベッドのある部屋にいた。

ノックをして覗いた瞬間、何かが飛んできたので慌てて顔を引っこめた。

本だ。



「ダメですよ、怪我がひどくなったら、どうするんです」

「いいから、俺を現場に戻せ!」

「ダメです!」



中ではスタッフがふたりがかりで、葉さんをとり押さえていた。

葉さんが枕を投げた。



「きゃあ!」



私の横の壁にかけてあった額縁もろとも床に落ち、ガラスの割れる音がする。



「あ…生方!」



ごめん、と言った瞬間、いつもの葉さんに戻ったように見えた。

左腕は固定具を当てられて、包帯にくるまれている。

その痛々しい姿とは対照的に、目は焦れて燃えていた。


なあ、と葉さんが私に訴えた。



「ここから出してくれ、治療なんかあとでもできるだろ」

「できません、一刻も早い手当てが必要なんですよ」

「生方まで、そんなこと言うのか…」



まるで裏切りにあったような声音に、こちらが正しくないことをしている気になってしまう。

だけどダメだ。

葉さんの、腕のためだ。



「まず治療を受けましょう、仕事のことはそれからでも」

「それからじゃ遅いんだよ!」

「聞き分けなさい、葉、その腕で何ができるっていうの」



いつの間にか入ってきていたエマさんが、鋭く言う。

彼女の目くばせで、スタッフが気遣わしげに振り返りつつ出ていった。



「すぐ手術すれば数日で退院できるそうよ、それからだって撮影に間に合うわ」

「ハンティングを終わらせずに、撮影なんてできるわけないだろ」

「終わらせるわよ」

「どうやって! 俺の代わりが、どこにいる」

「葉さん!」


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