グリッタリング・グリーン
違う違う、とエマさんが首を振った。
「あの状況じゃ、スタッフが責任を感じちゃうでしょ、半分は葉の自業自得なのに。それを気にするんじゃないかってこと」
「あの子は意外と、そういう部分は鈍感じゃないのよね」
「自分で思ってるより、リーダーに向いたタイプなんだと思うわ」
「鈍感で思い出したんだけど、エマ」
羨ましくなるほどおいしそうなピンクレモネードに口をつけて、沙里さんが隣を見る。
「何?」
「葉とはちゃんと話したの? きっとまだ、あなたが夢のために自分を置いてったんだと思ってるわよ」
エマさんが、しらっと流そうとしたのは、許されなかったみたいだった。
「エマ」
「そう思ってもらってもいいわよ」
「あなただけの話じゃないのよ、葉の身にもなりなさい、どうして事前に相談してあげなかったの」
「だって当時、葉はまだ二十歳になるかならないかの、子供だったのよ、私の話なんて、したって仕方ないでしょ」
「その頃からあの子は、自分の感性と腕で食べてたのよ、そうやってすぐ大人の余裕を見せたがるのは、悪いくせね、エマ」
はいママ、とふてくされるエマさんが、なんだか新鮮だ。
「日本にいるうちに、誤解をといてあげて」
「だから、あながち誤解でもないんだって、私は確かに勝手だったし。そもそも昔の話を蒸し返すような間柄じゃないのよ、もう」
「葉がそう言ったの?」
再び目をそらしたエマさんの視線が、私とぶつかった。
青い瞳が申し訳なさそうに、私と沙里さんの間で揺れる。
「そのへんの話、聞いてる?」
「前に…、でも葉さんも、エマさんが急に留学した理由を、よくは知らないみたいで」
「マーケティングの勉強をしたかったのよ、私の専攻は美術史で、エージェントをするには心もとなかったから」
「どうして、突然?」
それまではキュレーターだったって、言ってた。
葉さんがエージェンシーに嫌な思いをさせられた直後に、エージェントになるために勉強を始めるなんて。
それじゃ、葉さんを二重に傷つけるだけだってことくらい、当時の誰もが、わかっただろうに。
「あの状況じゃ、スタッフが責任を感じちゃうでしょ、半分は葉の自業自得なのに。それを気にするんじゃないかってこと」
「あの子は意外と、そういう部分は鈍感じゃないのよね」
「自分で思ってるより、リーダーに向いたタイプなんだと思うわ」
「鈍感で思い出したんだけど、エマ」
羨ましくなるほどおいしそうなピンクレモネードに口をつけて、沙里さんが隣を見る。
「何?」
「葉とはちゃんと話したの? きっとまだ、あなたが夢のために自分を置いてったんだと思ってるわよ」
エマさんが、しらっと流そうとしたのは、許されなかったみたいだった。
「エマ」
「そう思ってもらってもいいわよ」
「あなただけの話じゃないのよ、葉の身にもなりなさい、どうして事前に相談してあげなかったの」
「だって当時、葉はまだ二十歳になるかならないかの、子供だったのよ、私の話なんて、したって仕方ないでしょ」
「その頃からあの子は、自分の感性と腕で食べてたのよ、そうやってすぐ大人の余裕を見せたがるのは、悪いくせね、エマ」
はいママ、とふてくされるエマさんが、なんだか新鮮だ。
「日本にいるうちに、誤解をといてあげて」
「だから、あながち誤解でもないんだって、私は確かに勝手だったし。そもそも昔の話を蒸し返すような間柄じゃないのよ、もう」
「葉がそう言ったの?」
再び目をそらしたエマさんの視線が、私とぶつかった。
青い瞳が申し訳なさそうに、私と沙里さんの間で揺れる。
「そのへんの話、聞いてる?」
「前に…、でも葉さんも、エマさんが急に留学した理由を、よくは知らないみたいで」
「マーケティングの勉強をしたかったのよ、私の専攻は美術史で、エージェントをするには心もとなかったから」
「どうして、突然?」
それまではキュレーターだったって、言ってた。
葉さんがエージェンシーに嫌な思いをさせられた直後に、エージェントになるために勉強を始めるなんて。
それじゃ、葉さんを二重に傷つけるだけだってことくらい、当時の誰もが、わかっただろうに。