グリッタリング・グリーン
ぼやいて、パンの包み紙をくしゃくしゃと丸める。

いいお父さんじゃないですか。

少ない休みに、葉さんをあちこちつれ出して、無茶をさせては沙里さんに怒られていた様子が、目に浮かぶ。



「加塚さんは、これでいいのかなあ」

「いいんだと思いますよ」



着陸を控えた、大きな飛行機が、空を旋回しているのが見えた。

轟音はやっぱり、見当違いの方角から聞こえてくる。

涼しい木陰に移動しながら、青い空を見あげた。



「俺、小さい頃は、あの人が本当の父さんなんじゃないかって、夢想したもんだけど」

「事実なら大問題ですよ」



だよねえ、というため息が、心底残念そうだ。



「いっそ誰かと結婚すればいいのに」

「その気になれば、相手はいくらでも見つかりますよね、そういえば来期から、役付きになるかもって噂です」

「ああいう人が上にいると、下は幸せだね、いい男だし優しいし、収入あるし、誰かの旦那に収まっちゃうなんて、もったいない」



どっちなんですか。

なんにせよ相手が現れたら、その人は葉さんを突破するのに、一番苦労するだろう。

俺もそう思う、と本人がうなずいた。





「どこか泊まるとか、どうかな」



傾斜した芝生に腰を落ち着けた葉さんが、唐突に言った。

端末で何やら、熱心に調べものをしていたと思ったら。

寝転がる葉さんの隣に横になると、青い海が液晶画面を埋めつくしているのが見えた。



「何がですか?」

「やっぱりはじめては、特別な想い出にしたいよね」



いつにする? と真顔で訊いてくる。

私は口を開けたまま、じわじわと顔が熱くなるのを感じていた。

そんなこと考えてたの、ずっと?



「いちゃいちゃするなら、南の島がいいらしい」

「そんな壮大なプラン、逆にプレッシャーです」



なんで、と目を丸くされる。



「別に、大事にとっといたわけでもなくて、ただ捨てる機会がなかっただけなんですから」

「ゴミみたいに言うなよ、こっちは喜んでんのに」

「そんなにいいものですか、面倒じゃないですか?」


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