グリッタリング・グリーン
水張りしていたパネルから、カッターで紙を切り離す。
いつも胸が高鳴る、完成の儀式。
不思議と、パネルにおさまっていた時と一枚の紙になった時とでは、描かれている絵の表情が違う気がする。
新しい絵をカルトンに挟んで、私は会社に行く準備をはじめた。
「おはよ、なんか元気だね」
「久々に完徹しちゃって、一周して元気です」
「それ、若い証拠」
いいね、と給湯室から出てきた未希さんが明るく笑う。
たとえ睡眠時間が減ろうと、好きなことをしていると疲れないのは、なんでなんだろう。
翌日に備えて、やりたいことを我慢して早く寝たりした時って、結局そんなに元気でもない気がする。
すると未希さんが、何か箱を差し出した。
「糖分補給に、はい」
わっ、可愛いチョコだ。
ピンクとダークブラウンのハートたちの中からひとついただいて、思わず、そうだ! と声をあげた。
「どしたの」
「いえ、えーと、もうすぐバレンタインだなあって」
「葉さんにあげるの?」
なんでそんな見透かすんですか。
赤くなりつつ、部長にもです、と苦しい言い逃れをする。
先日ごちそうになったお礼に、ささやかな贈り物をしても罰はあたらないだろう。
葉さんには、この間不快にさせてしまったお詫びに。
当分仕事で会う予定もないから、これを理由に一度会いに行こう。
「社内で配る風習は、ないんですよね」
「うん、だからそうやって個人的にあげるのはオッケーよ、私も毎年、部長とチームの人にだけは配ってる」
噂によると、人事総務部のおばさまが、男尊女卑の悪習と言って配らせないのだとか。
「どこまで本当なんでしょうね」
「ねえ、でも女性の数も多いから、みんなであげたら、男の人たちお返しに困っちゃうかもね」
「確かにですね」