グリッタリング・グリーン
「生方は、両親と仲いいの」
突然変わった話題に、一瞬置いていかれた。
慌てて、そうだなあと頭を働かせる。
仲がいいとも悪いとも意識したことがないから、つまり、いいんだろう。
そう答えると、葉さんは背もたれに寄りかかって、いいね、と小さく息をついた。
それが少しさみしそうに見えたので、私はつい、励ましたくなり。
完全に、方法を誤った。
「お父さん、本当は葉さんと仲よくしたいんじゃないですか?」
あーあ、と部長が小さく言った。
「怒ったでしょ」
「それはもう…」
何がわかんの、とか、あいつの味方すんの、とか、父親交換できるって言ったら、する? とか。
完全に自分が軽率で無責任だった自覚があるだけに、すみませんと顔を伏せるしかなかった。
思い出してしょげる私を、部長が笑う。
「部長、ちょっとこれ見ていただけませんか」
「うん、何?」
「ギフトカタログで使う、フードコーディネーターの候補です」
了解、と部長が紙カップをゴミ箱に投げ入れ、声をかけてきた部員のほうへ行く。
小さなカップに残った液体を飲み干しながら、考えた。
今日は葉さんに、もうひとつ訊きたいことがあったのに。
私の失敗のせいでかんかんに怒って、最後にはむすっと黙り込んでしまったので訊けなかった。
部長と、葉さんのお母さんのこと。
部長は、クライアントの女性社員が、今度彼が打ち合わせに同席するのはいつなのって訊いてくるくらい、いい男なのに。
あの歳になるまで独身で、浮いた噂を聞かない。
もしかして、若い頃の切ない恋を今でも引きずっているのかしら、なんて。
部下としては興味が出て当然なわけで。
「朋枝ちゃーん、電話だよ」
「はい」
未希さんがデスクで受話器を振っている。
私はカップを捨てて、そちらに走った。