指サックの王子様
「な、なんでそれを……。だいたい、指サックにイケメンもなにもなくない?」

たしかに彼の言うとおりで、私は怖さよりも意外にも不思議な感じの方が強かった。

「イケメンかどうか迷いながら買ったのは梓だろ?」

「はあ?」

使いやすいかどうかで決めたのには間違いないけど、どちらというと可愛いデザインを選んだつもりだったのに。

「そんなことより梓、あの部長のことは気にするな。毎日ひとり残って報告書作ってたのは知ってる」

「え……?知ってる?」

彼は微笑むと、私の頭を優しく撫でた。

「ああ。ずっと見てたから。いつも梓がオレを大事に使ってくれてるから、今度はオレがお返しする番」

そう言ってイケメンくんは、私を抱きしめた。

自分を指サックって言ってる割には温かい。

「やっぱり、あなた人間でしょ? 温かいもの」

「だから違うって。オレが温かいのは、梓の優しさが染みてるから。梓からもらったものなんだよ」
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