彼はメッセンジャー
「ねぇねぇ、佐原さん。気づいてる?俺、もう次の伝言で最後なんだよ」
「え?……あ」
ふと思い出しデスクの引き出しを開ければ、ついこの前まで沢山あったように感じていた彼の姿はもうなく、目の前の彼が最後のひとりであることに気付く。
彼は私の顔を覗き込むと優しく微笑んだ。
「小さなことも大切なことも、言葉にしなきゃ伝わらない。伝わらなくちゃ意味なんてない。だから、俺がいるんだよ」
「そう、だけど……」
「思いがあるなら、伝えさせてよ」
躊躇う私の手をぎゅっと握ると、彼はこの手にペンを持たせる。
最初は渋っていたけれど、それでも離してくれることのない彼の手にまるで心を支えられるように、私はゆっくりと簡潔なひと言を書いた。
「……伝言を、お願い。『私こそ、ごめんなさい』って」
記された丸い字を見て、彼は嬉しそうに笑って頷く。
「うん、わかった。最後の伝言、ちゃんと届けるね」
そして吉野さんのもとへ向かおうとフロアを出て行こうとする。そんな彼を「待って」と呼び止めた。