幼馴染みの期限
……だけど、 


「嫌だ」


広海は、離れる事も許してくれなかった。


しかも、


「……他の誰かになんて間違えてない」


「俺はお前に……樹里に『お帰り』って言ったんだ」


言い逃れなんてできないこの状況で、まだそんな事を言ってくる。


その言葉を鵜呑みにして喜ぶ事なんて、とてもできなかった。


呆れたような、がっかりした気持ちが心の中に広がっていく。


「でも『減った』って言ったよね?それって、抱きついた感触がきょにゅ……他の子と違ってたからじゃないの?」


「それは……ごめん」


「…………否定してよ」


「いや、胸だけじゃなくてさ、昨日も美桜の所に連れて行くまでだいぶ悩ませたし、今日も昼飯まともに食ってなかっただろ?だから胸だけじゃなくって、単純に身体が一回り細くなったような気がしたんだ。……胸だけじゃなくてな」


「だから、いちいち胸胸胸胸言わないでっ!!」



ーービシッ!


何度目かのチョップを広海のつむじに落とした瞬間、締め付けていた腕の力がちょっとだけ緩んだ。


私は、その隙を逃さないように、素早く腕の中から抜け出した。


本気で逃げるつもりじゃ無かった。


ただ、訳も分からず誰か(他の女)の代わりに抱き締められたこの状況からは逃げ出したくて、気がついたら身体はドアの方に向かっていた。

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