幼馴染みの期限
私の涙を、存在を確かめるように頬に当てられた掌は、そのまま広海の体温を、存在をダイレクトに伝えてくる。


その感触だけは本物(リアル)なのに、言葉は現実のものじゃないみたいに、なかなか私の心の中にストンと落ちて来てくれなかった。



「……どうして?……だって、広海言ってたよね?私の事、『大好き』『だった』って」


「それって、もう他に好きな人がいるからじゃないの?」


「だって、だって……広海が言ったんだよ?『失ったものを取り返して来い』って」


昨日の言葉なのに、思い出すだけで今言われたみたいに心がズキンと痛む。


「向井くんの所に行けって言われたんだって思った。失った初恋を取り返しに行けって……突き放されたんだって思った」



広海を疑ったり、責めるような言葉を吐いてしまう。


みっともないけど……『お前だけだ』って言ってくれた広海の言葉を、信じたくても信じられない。



「……だって……10年前に最初に言ったのは……っ広海なのにっ……『失ったものは取り返さなくていい』って……」


「私はっ……あの時に決めっ……たん……だよ?」


「失った……ものは、取り返さない、って……それなのに、『取り返してこい』って、言った……でしょ?」



込み上げる涙を押さえきれない。


離れたくないなら、どうして向井くんの所に行けって行ったの?


……広海の気持ちがどうしても理解できないから、広海の言葉も信じられないんだ。


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