幼馴染みの期限
私が介護の仕事を選ばなかったら、きっと広海はこの仕事に就くことはなかった。


私に異動して欲しくないって、それだけの理由で仕事を変えて欲しくないし、やっと気持ちが通じ合ったのに、このまま離れてしまうのも正直寂しいし、不安な気持ちの方が大きい。


そんな私の気持ちもお見通しなのだろう。広海は、また優しい笑顔を見せた。


これ以上、私の不安が膨らまないよう間を置かずに、私の目を真っ直ぐに見つめて話してくれる。


「俺、ケアマネの資格を取りたいんだ。だから、訪問の方でも仕事をしたいって前から思ってた。……まぁ、樺山さんに大目に見てもらうのも限界だったし、どうせ異動になるなら、自分がやりたい事をやったほうがいいしな」


「それに、もう職場は離れても大丈夫だろ?寂しかったら……そうだな、これからは一緒に暮らせばいいんじゃねぇの?帰る所が一緒だったら寂しくないだろ……って、樹理?おい、どうした?」


広海は……私に合わせるだけの人生じゃなくて、やりたい事をちゃんと見つけていた。


だけど、その喜びと一緒に突然降ってきた『一緒に暮らそう』宣言に、今度こそ私の思考はピタリと止まってしまったのだった。





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