フテキな片想い
「ありがとう。でもそんな兄になるのは絶対、無理だよ」
お兄は情けなく笑う。
「でも、代わりに晴美さんはそういうタイプだよな。俺、晴美さんに引っぱたかれた時、ショックだったのもあるんだけど、それと同時に、この人、本気で俺のことを叱ってくれるんだって、ちょっと嬉しかったのもあるんだ。晴美さんも俺の事、美雨みたいに自分の子供として向き合ってくれてるのかなって。母親ってこんな感じなのかなって。お兄が、晴美さんを選んだ理由が、改めて解った」
お兄は手を握ったまま、優しい微笑みを向けた。
「正直、家出して、帰って来た時に、お兄と晴美さんが「おかえり」っていつもみたいに迎えてくれたのは、嬉しかった。ここが俺の家なんだなって再確認出来たっていうか、面と向かって、こんなこと言うの、何か恥ずいけど」
「それはね、美雨ちゃんにお願いされてたんだよ。私が真央を連れて帰ってくるから、玲央さんはいつも通りにおかえりって言ってあげて下さいって」
「美雨が?」
とくんと胸が鳴り、胸の奥に温かい気持ちが広がっていく。
「そう、美雨ちゃんにアドバイスされたんだよ。真央ともっと話して、言いたい事は言わないと伝わらないんだって」
いつかどこかで聞いたようなセリフだ。
言ったのは自分だったっけ?カッコつけた事、言っといて、自分が実行出来てないんだから、ダサ過ぎる。
「美雨ちゃんは、本当にいい子だよね」