閉じたまぶたの裏側で
應汰はここに来た経緯を話すと、コーヒーを飲んで私の方を見た。

「芙佳、なんで俺に言わなかった?」

「なんで…って…。心の傷を癒したかった。一人になって、ちゃんと自分を見つめ直したかった。あのまま應汰に甘えてたら、ダメになっちゃいそうだったもん。」

「俺には甘えてくれていいのに…。」

テーブルの上で應汰は私の手を握った。

久しぶりの應汰の手のぬくもりが心地いい。

「傷は癒えた?」

「…うん。」

「俺は芙佳に会いたくて、ずっと探して、ここに来た。好きだから。」

「ありがと…。」

「まだあの人が好き?俺は…まだあの人の身代わりにしかなれないか?」

應汰の手を握り返して首を横に振った。

「目を閉じるとね…あの人の事ばっかり浮かんできた時もあったけど…。今は…。」

「今は?」

少し身を乗り出して、應汰の唇にキスをした。

應汰が少し驚いている。

「目を開いてても閉じてても、いつも應汰の事ばっかり、考えてる。」

テーブルを挟んだ距離がもどかしくなったのか應汰が私の隣に座った。

「ちゃんと言えよ。」

「ん?」

「俺が好きだってハッキリ言え。」

「……やだ。」

「なんでだよ、こいつ!!」

應汰は私を抱き寄せて、逃げられないように長い腕で抱え込んだ。



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