おいしい時間 しあわせのカタチ
それからまたさらに数日が経った二月十四日。
せっかくのバレンタインデーだというのに、日暮れと同時に急に強くなった雪は依然として勢力を保ったまま、街を白く染めあげていく。
いつもはカウンターにいる佐希子も、厨房を走り回っている根岸くんも、今夜は居場所を屋外に移して、はいてもはいても終わりのない雪かきに精を出していた。
「今日はさっぱり人が入りませんねぇ」
「あら、でもさっきまたふたりおでんを買いに来たじゃない」
「ふたりじゃあなんとも……、てかうちはコンビニですか」
「家庭で作るのは手間がかかりすぎる料理なのよ、それだけ」
「……大上、本当に来るでしょうか」
かじかんだ手に息を吹きかけながら、根岸くんは先ほどからしきりと通りのほうを気にしている。
というのは、今日の午前中、やっと時間が取れることになったから今夜店に顔を出すと、大上さんから連絡があったそうなのだ。
「そりゃあ来るでしょう。だって自分の今後がかかった話をしに来るんですもの。それに、なんてったって今日は枡屋特製おでんの日だし」
「それは知らないと思うけど……。あ、佐希子さん、車ですよ」
腕を引かれて道の端に寄りながら、駐車場に入っていく車の所有者を思い出していた。
「こんばんは、佐希ちゃん! 今日も寒いね」