おいしい時間 しあわせのカタチ
助手席から、思いがけず、嶋内工業の校長先生が窮屈そうに降りてきた。
ほう、と佐希子は眉を上げる。
校長の車はだいたいSUVかセダンのはずだった。見れば同乗者もいるようだし、誰か教員の車かと納得すると、佐希子はぱりぱりする頬をすこし大げさなくらいに動かしながら、
「こんな日までご足労いただきまして、ありがとうございます。どうぞ中で温まってください――」
促しつつ、シャベルを根岸くんに預けたところで、後部座席から続けざまに降りてきた二人のジャージー姿の男の人に目を留めた。
ひとりは先日の、どうやら早見くんのようだが、もうひとりは……誰だろう。
「こんばんは」
前回見たときより幾分明るくなった表情に、佐希子までほっとする。
あれからなにかいい進展があったのかもしれない。
「約束、守ってくれたんですね、嬉しい。お腹空いてるでしょう、早く中に入って入って。――ゴンさん、四名様ー」
「あいよー」
果たして最後に車から降りてきたのは、早見くんたち野球部を束ねる監督兼顧問の教職員だった。
幸い、コーチはいないようだ、が……、
(だからって、早見くんが覚えてたら同じか)
むむ。
ぞろぞろと店に吸い込まれていく嶋工メンバーの背中からおもむろに目を転じると、根岸くんも、そう来たか、と苦虫をかみつぶしたような顔で店と通りとを見比べていた。