おいしい時間 しあわせのカタチ


「わたし、いったん中戻るけど、根岸くん――」

「俺、もうちょっとここで雪、片付けててもいいですか」


 佐希子は神妙に頷いた。三人いれば、今日の客入りなら、手は足りるだろう。


「そうしたほうがいいと思う。話は、なんならうちでしてもいいから」

「……すいません」


 根岸くんを残して、佐希子は暖簾をめくった。





「――正直、おでんなんてどこで食べても一緒だと思ってました」

「お、おい……そんな」

「あらぁ、それって最高の褒めことばよ」


 早見くんの感想をうろたえながらたしなめるのは同じ野球部の一之瀬くん。

 早見くんと比べればやや肉付きの悪い体格だが、顔自体は佐希子は決して嫌いではなくて、土井コーチに通ずるところのある不良系の鋭く毒っぽい容貌が見る者を惹きつける。

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