おいしい時間 しあわせのカタチ

 暴力事件以来ずっと反目し合っていたふたりだが、ついに和解に至ったらしい。

 カウンターに仲良く並んで腰掛け、前回の早見くんのようにそわそわと落ち着かない一之瀬くんをからかいながら、どこか先輩風を吹かせるように世話を焼いている姿が微笑ましい。

 今日のメインはもちろんおでん。それからふたりには特別に精がつくようにと鶏肉を仕込んだ自慢の茶碗蒸しを用意した。

 ふたりの歳には意外だが、ジャンクフードより素朴な日本食のほうが口に合うらしく、茶碗蒸しはことのほか喜ばれた。


「枡屋のおでんは昔から絶品だからね。いやしかし、若いのにおでんの美味さがわかるなんて、君たちはなかなかいい育ち方をしているようだ。――今日はわたしの奢りだよ、たんと食べて、明日からの練習もがんばりなさい」

「ありがとうございます」


 二人は声を揃えて礼を言い、寒々しい頭を下げると、またしても猛然とおでんと白飯を掻き込みはじめた。

 校長に目配せされて、あるだけの料理を並べていく。

 どれも幸せそうに、あるいは恍惚と、料理に舌鼓を打つ高校生の素直な反応が快い。実にいい景色だ。


 それに、もうひとつ――。


 ふたりが、時折目線を交わしては、口元だけで笑い合う仕草に、仲直りができたことを喜ぶ以上に心の底からほっとしている様子なのを見て取って、なんだか佐希子まで感じ入り、らしくもなくうるっとした。


(この様子なら、きっと、来季の公式戦には出られるんでしょうね。よかった)

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