おいしい時間 しあわせのカタチ
「――あら、校長先生たちは?」
厨房から戻ってくると、先ほどまで早見くんたちの横にいた校長先生と監督さんが消えていた。
「校長の携帯に急に連絡が来てな、監督が送ってくるって出てったよ。なんだか、断りの通じねぇ飲み会……みたいな雰囲気じゃなかったか?」
「ずいぶん慌ててましたよね」
ゴンさんに同意を求められ、早見くんが頷いた。
「あらあら、お忙しいこと。顔が広い人は大変ね」
「そうだなぁ」
「佐希ちゃん、ごちそうさま。お勘定たのむよ」
呼ばれて行くと、お金といっしょに可愛らしいちいさな包みが受け皿に置かれていて、佐希子は小首を傾げてお客を見つめた。
「これは?」
「会社の子からもらったやつさ。そのへんで売ってるやつをバラしてそれらしく包みなおしただけのすんげぇ義理チョコなんだけど、よかったらもらってよ」
「いいんですか? 嬉しい、わたしチョコレート好きなんです」
「安っすいやつで悪いけどね。俺、あんまり甘いの得意じゃなくてさ」
へへ、ラッキー。これで今日の収穫は三つ目だ。
うちの店に来るお客はわりとこの手が多く、毎年少なくない数のおこぼれがもらえるので、ひそかに楽しみにしている。
「そういえば、おまえは今年何個もらった?」
「五個、かな。早見は?」
「俺も五個。マネージャーの入れたら六つだけど」
「それは俺もそうだよ」
「それよか聞いた? 正大の安斎んとこ、今年はチョコが大型トラックで届いたらしいぞ」
「ああ、あいつ。遠目に見るとまあまあいい顔してるからな」
思わず噴出しそうになった。遠目って。