おいしい時間 しあわせのカタチ
「あ、俺ちょっとトイレ」
「ん」
監督さんが戻ってくる気配はない。
この雪なら今日は早めに仕事を切り上げる人も多いだろう。そのせいで道が込んでいるのかもしれない。
「お茶どうぞ」
「すいません。――佐希子さん、あの、このあいだはご迷惑おかけしてすみませんでした」
「迷惑? なにも迷惑なんてしてませんよ」
ありのままを言ったつもりだが、それでも早見くんは小さく頭を下げた。
「――ぜんぶ、俺のせいだってことは、重々自覚してたんです。俺の気の短さが原因でチームが秋大に出られなくなったのも、そのせいで、今の三年に恩義を感じてる一之瀬が部活に出にくくなったのも……、よくわかってたんです。だから俺がなんとかしなくちゃって思いはいつも頭の中にありました。でも、一之瀬には、あいつにはあいつの立場があるからってことを言い訳にして、つまらないプライドに逃げてたんです、ずっと。でもコーチのおかげでやっと踏み出す勇気が出て……」
一之瀬くんの気持ちをほぐすため、コーチは、本人のみならず、部全体にもいろいろ根回しをして、早見くんが声をかけやすいような環境を整えてくれた。