おいしい時間 しあわせのカタチ
「いいコーチね」
「はい。土井コーチがうちに来てくれて、本当に感謝してます。それに監督さんとのことも……」
「監督さん?」
「はい。今の監督さんも優しいし、よくしてはくれるんですけど、俺たちとはまだその距離があるっていうか……。夏の不祥事のときに監督不行届きを理由に引退された監督さんの後にいきなり任命された方なので、なんていうか、ご本人も汚れ仕事を引き受けた気になってるんじゃないかって――邪推だとは思うんですけど、だから、俺たちもなかなか心を開けない部分があって」
そのことも含めて、いちばん部がぎすぎすしているときに潤滑油として奔走してくれた土井コーチには、感謝してもし切れない思いがあるのだろう。
はじめて店に来たときのコーチを思い出せば信じがたい話だが、意外に根は情熱的な人なのかもしれない。
「でも今はうまくやれているんでしょう?」
「はい。もっとも、いつまで続けてくださるかはわからないんですけど。監督さんも野球経験はありますが、それでも次の指導者が決まるまでの繋ぎって噂もあるので」
強豪のレッテルを守るために妥協はできない、という学校側の維持か。
もっとも、そのあたりを餌に推薦も取っていたりするはずだから、親御さんたちからの圧力もあるのだろうけれど。
「てことは次の監督はまさか、土井コーチかい?」
ゴンさんが訊ねれば、早見くんは神妙な顔で頷いて、「その確率が一番高いって言われてます」