おいしい時間 しあわせのカタチ
お勝手での物音に反応して顔をのぞかせた根岸くんの後ろから、大上さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
「すいません、俺のためにわざわざ……」
「いいんですよ。またすこし雪も強くなってきたみたいだし、ゆっくりしていって」
「佐希子さん佐希子さん、よかったら店に戻る前に一杯、どうですか?」
根岸くんが言って、ちゃぶ台の上のささやかな宴の膳を示した。
それらは主に枡屋でこしらえたものだが、中には見慣れぬ漬物や和え物、さらに茶色の一升瓶まで混ざりこみ、実に家飲みらしいざっくばらんな空気ができあがっている。
「大上が持ってきてくれたんです。金箔入りですよ」
「え、金箔!」
「この前のお詫びを兼ねて。佐希子さん、お酒お好きだったでしょう? すこし辛口で美味しいですよ」
「あらそう? じゃあせっかくだし、お言葉に甘えて……」
と佐希子は自分の分のお猪口を手にいそいそと居間に上がった。
「あらぁ、綺麗。見てるだけでリッチな気分ねぇ」
「金は身体にいいですからね。女性にはとくに」
「そう言いますね。なら、遠慮なく――」