おいしい時間 しあわせのカタチ
ええ、と揃って驚愕するふたりに、佐希子はやんわりと微笑んで首肯した。
嶋内工業高校の校長先生とは長い付き合いで、先代がいたころから本当によくしてもらっていたし、なにしろ急なことだったらしく、都合がつきそうにないと泣きつかれたうえ、食べ盛り、成長途中の子供たちのためだと言われれば断ることなどできなかった。
それに先月の一件で、嶋工の野球部にはすこしばかり情が湧いてしまったところもあって、なにかしてあげたい気持ちは強かった。
「へぇ、あの学校、公立なのに寮なんてあんのか」
「普段は、言っても10人弱くらいしかいないらしいんですけど、今は野球部がちょうど合宿中で、料理上手な先生だけでは手に余るからって。朝は根岸くんに手伝ってもらって、夜の分は丹後さんにサポートに入ってもらってます」
「すげー佐希子さん。野球部のやつらの胃袋を裁くのは大変でしょ。あそこって、しかも50人くらいいるんじゃないですか?」
「げ、そんなにかよ。大丈夫なのか、佐希」
「うーん、そこまでいたかしら。三年生が抜けたから30人くらいだと思います」
「それでも普段からいる寮生と合わせたら40だろ? とんでもねぇ大所帯だ。佐希ちゃん、ちなみになんだけど、寮で使う食材はどこから仕入れているのかな?」
「抜け目ねぇな」
ゴンさんが言えば、大上さんもくすくすと忍び笑いを洩らす。
へへ、と社長は茶目っ気たっぷりに肩をすくめて見せたが、
「職業病だな、どうしても気になっちまって」
「学校から指示があって、直接市場から買い入れてるみたいです。細々した調味料とかは買い置きを使うように言われてるし、その他で必要なものはエイトクさんで買ってくださいって名指しで説明されて。そこまで言われたらもうわたしも言うとおりにするしかなくて、ごめんなさいね」
「いやいや、いいさ。仕方ないよ。公立だもんな、切り詰めてかなきゃならんのはどこも一緒だ。エイトクさんは、うん、間違いない。ただちょっと、賞味期限が短いだけだ」