おいしい時間 しあわせのカタチ
「でも俺はけっこう楽しみですけどね」
「あら前向きー」
――餃子か。育ち盛りの男の子たちにはまず間違いなく喜んでもらえるだろう。
今日が鶏だったなら明日は豚か。
悪くないわね、と餃子を中心にした献立を考えながら、佐希子はセイロを運んだ。
「佐希、おまえはもう帰ったらどうだ? 明日も早いんだろ? ここは俺らに任せてよ」
店じまいのあと、常のようにテーブルを拭いて回っていた佐希子に、ゴンさんが気遣わしげな声をかけた。
「平気よ。それに店の始末はわたしの担当ですし。これはおばあちゃんからの遺言であって絶対に守らないといけない掟ですから。でもありがとうゴンさん。わたしなら大丈夫」
「そうか? ならいいんだが」
「……あの、お二人さん、ちょっといいですか?」
妙にあらたまって根岸くんが話しかけてきたのはそんなときだ。
おしぼりを外に干してきたところなのか、鼻の頭がちょっぴり赤くて、それで余計に心細そうに見えた。
「ああ、どうした護」
「いえあの、さっき俺、ちょっと妙な噂を耳にしたんですけど……おふたりは、その、なにか聞きましたか?」
もったいぶった言い回しに佐希子とゴンさんは互いの顔を見合わせる。
思い当たる話を聞いた覚えのない佐希子は不可解そうに根岸くんを見返した。