おいしい時間 しあわせのカタチ
「護、なにかあるなら焦らさずはっきり言え」
「べ、別に焦らしてるわけじゃないですけど、さっき言われたんですよ。シューマイのお礼を言われたから外まで送りに出たときです。よくわからないけど、吉川(よしかわ)が開いた店もそろそろ危ないんじゃないか、とかなんとか……」
「なんだと」
「吉川さんが?」
次の瞬間、佐希子とゴンさんは揃って目を剥いた。
まさか、吉川さんの店が? そんなはずは……。
いきなりうろたえるふたりを見比べて、ひとりだけ蚊帳の外にいる根岸くんはいささか不服そうに唇を尖らせて、
「その、吉川さんって誰なんですか? なんか、口ぶりからいって前に枡屋にいた人みたいな感じだったけど。独り立ちして店ぇ広げて、がんばってたのに、とかなんとか……」
「そう……吉川さんが」
「え、てことはやっぱりそうなんですか? 俺が来る前にここにいた人?」
「ええ、そう。最近では彼がいちばん最後よ。って言ってももう五年くらいになるけれど。若草町に店を構えて、すごくうまくやってるって聞いてたのに。……ゴンさん、なにか聞いてました?」
「いや知らない。寝耳に水だ。でもよぉ、それおかしくねぇか? だって、そうさ、ヨシのやつがはじめた店は今も繁盛してるって話だ。今週のフリーペーパーにだって店の広告が載ってたぞ。聞き間違えたんじゃないか?」
「そ、そんなことないですよ! 俺を疑うんですか?」
「そんなつもりはないのよ、根岸くん。ただ……」
「――だったら多分これのことですよ」