夜の職場の君のミス

「い、いやあぁぁぁぁあ!!」


目を見開いて大声をあげるが、そのゾッとする光景はなくならない。

と、同時に眉間に皺を寄せ、怒りの表情を顕にした彼の怒声が響いた。


「かーねーきー!!」

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


兎に角平謝りするしかない。

なんせ、イチ君の真っ白なワイシャツに、私のコーヒーをぶちまけたのだから。

慌てて鞄に入れていたハンドタオルで擦ってみるも、茶色のシミは全くなくならない。

寧ろ、ハンドタオルに押されて範囲が拡大した気もする。


「どうしてくれんだよ、これ」


不満そうな彼の声が真上から降ってくる。

顔を上げれば彼の怒りの表情。

それを何とかして誤魔化せないかと、へらっと笑うが、彼はそんなに優しくなかった。


「と、取れないかな?」

「取れねぇよ!そんで、取れてねぇよ!」

「で、ですよね」


イチ君の言う通り。

もうどれだけ拭いたって元通りになんてなってくれない。

自分の失敗に目頭が熱くなる。

後少しで涙腺が決壊する…と思った時、

「ほんとにお前は、どうしようもねぇな」

そう言いながら、ぽんっと私の頭に彼の大きな手が乗せられた。


「まっ、でも。金木に掛からなくて良かったよ」

「えっ?」

「お前が火傷なんかしたら嫌だって言っただけ」


私の事もよく分かってるからこそ、絶妙なタイミングでどん底にいた私の手を取り、いとも簡単に引き上げてくれる。

その事に胸が温かくなる。

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