wish
今度は母が驚く番だった。


「か、しゅ?」

「うん、歌手。昔からの夢なの」


どんな顔をしてこちらを見ているのか、気になったが恐くて母の顔を直視できない。

体の横で、ぎゅっと手を握った。

伸びた爪が、手のひらに刺さって少し痛かった。


「歌手って、そんなどうなるかも分からない職業、許せるわけないでしょ?」


想像していたとおりにの反応に、友香は手の力を強める。


「そんなこと…
お父さんになんて言うの?」



両親はいたって普通の人。

普通に学校を出て、就職して、結婚して。


何よりも、普通に、を主張する両親。


人と違った生き方はしてほしくないという。


だからずっと夢のことを言ったことはなかった。

言ったらきっと反対される。

それは分かっていたはずなのに、実際に反対されて、少し寂しい気持ちになった。


分かってたのに。

なんでだろう?

涙が出る。



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