wish
「友香、それ本気で言ってるの?」


涙がこぼれ落ちそうになるのを堪えて、友香は首を縦に振る。

母は呆れたようにため息を吐き、顔をしかめた。


「お父さんには、
まだ黙っておくから、よく考えなさい。
今日が残業でよかったわ」


母はそれだけ言うと、椅子から立ち上がり成績表をもとの場所に片付ける。

友香はまだ全部食べていないシチューを残して自分の部屋に戻った。

ばたんっ

と勢い良く扉を閉めて、そのままベッドの上にダイブする。

さっき握り締めた、手のひらが痛い。


痛いのは、手のひらだけじゃないのかな。


ぐぅ、と鈍い音がお腹から響いた。

こんなときでも、お腹が空くのか。



寂しさと、

悔しさと、

痛みが、

友香の心を埋めた。


母には聞こえないようにと、声を枕にぶつけて押し殺す。


泣きたくないのに。


止まらない。

< 105 / 218 >

この作品をシェア

pagetop